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◆◇◆◇◆ 2008/10/13(月) ◆◇◆◇◆

『コードギアス』考察 -ルルーシュと3つの顔-

『コードギアス -反逆のルルーシュ- R2』が終わって2週間。
さすがにおちついた(苦笑)。
いや、自分が書いた最終回のレビューを読み返して、我ながらイタい人だなあ、と思ったよ。
で、ここ2週間つらつらと考えたことをぱらぱらと書いてみようかな、と思った次第。

ルルーシュには3つの顔があった。
「ブリタニアの皇子」としてのルルーシュ、「ブリタニア人の学生」としてのルルーシュ、「ゼロ」としてのルルーシュ。
『コードギアス』の物語は「ブリタニアの皇子」でしかなかったルルーシュが、その立場を失ったところから始まる。
宮廷の中で生まれ、母親の愛情を信じ、妹たちに愛情を注ぎ、すべてが満ち足りた狭い世界で育ったルルーシュ。
しかし、そんな世界からルルーシュはあっさりと追放され、幼い彼に残されたものは視力と動く足を失った最愛の妹と、父に対する憎しみだけだった。
しかし、そんな絶望の中でも、ルルーシュには得るものがあった。
宮廷の中では得ることができなかった対等の友人・スザク。
友人と共に自然の中を自由に駆け回った時間は、宮廷の外にだって幸せな世界は存在するんだと、ルルーシュに信じさせたんだと思う。
しかし、そんな幸せな時間は、またもや唐突に打ち切られてしまった。
それも、ブリタニアの侵攻という、「身内」の行いによって。
親友と引き離され、ルルーシュに残されたものは妹と、さらに増した父親への憎しみだけ。
一期の時に、C.C.がルルーシュになぜ「ルルーシュ」の名を使い続けているのか、と訊いたことがあった。
確かに、ルルーシュとナナリーが違う名を名乗っていれば見つけ出されるリスクは格段に減るはずで、それがわからないようなルルーシュではない。それでもあえてルルーシュが「ルルーシュ」であり続けたのは、それがルルーシュにとっての最後の抵抗だったからなんじゃないかと思う。
自分と妹がここで生き延びていることを知られてはならないのに、自分はここに「存在」しているのだと主張し続けるという、意味がないどころか危険な悪あがき。
そんな矛盾を抱きながらも、ルルーシュはアッシュフォード学園の中で「ブリタニア人の学生」という顔を手に入れる。

学園という囲われた「世界」の中で、温厚で人当たりがよくて切れ者の生徒会副会長という「仮面」を身につけたルルーシュ。
それはそれなりに平穏で幸せな世界で、ナナリーはその世界に浸ることができたけど、ルルーシュにはそれができなかった。
ルルーシュはどうしても「ブリタニアの皇子」としての自分を忘れることができなかった。
自分とナナリーの立場がものすごく危ういものであることを、ルルーシュは無視することができなかったし、父に対する憎しみを捨て去ることができなかったし、何よりも、「ルルーシュ」としてのアイデンティティを学園生活の中に見出すことができなかったんじゃないかと思う。
ナナリーを守りきる力を持たず、身動きがとれない状況の中で、賭けチェスという危険な遊びだけが唯一の「反逆」。
そんな状態を打破するのに十分な力を、ルルーシュは手に入れた。
それが、ギアスだった。

ルルーシュは自分とナナリーを守ることだけにギアスを使ってもよかったはずだった。
ルルーシュにとって都合のいい情報だけをナナリーに与え、穏やかで争いのないはりぼての「世界」を創り上げ、ディフェンスだけに注力して生き延びることもルルーシュにはできたはずなんだから。
だけど、ルルーシュはブリタニアが支配する「世界」そのものを打ち壊そうと歩き出した。
ナナリーを守りたい、ナナリーにとって優しい世界にしたい、という願いは当然として、「ルルーシュ」としてのアイデンティティを再構築したい、という欲求をルルーシュは抑えることができなかったんじゃないかと思う。
常に、理不尽な方法で大切な「世界」を奪い取られてきたルルーシュは、その報復として、自分に都合のいい「世界」を創り上げようとした。
ギアスにはそれを実行できるだけの能力があり、ルルーシュにはそれを最大限に活かすことができる知力がある。
そして、ルルーシュは初めて自分の意志で「仮面」を被る。
それが「ゼロ」という第3の顔。

いろいろと失敗をしつつも、「ゼロ」は黒の騎士団とそれを支持する一般大衆、という成果を手に入れていった。
そして、その過程でたくさんの人が死んだ。
兄であるクロヴィスを殺した時はさすがにダメージがあったようだけど、それ以外はさして人を殺すことに迷うシーンは見かけられない。
だって目的のためにはしかたないじゃん、的な軽さまで感じるくらいな勢い。
このドライさはなんだろうな、と考えて、もしかしたら母親が暗殺されていることが関係しているのかも、と思った。
宮廷闘争によって殺された(と当時は思われていた)マリアンヌ。その死は宮廷内で「しかたないこと」と片づけられていたんじゃないかと思う。
誰かが自分の目的を成し遂げるために誰かを殺す。それはしかたのないこと。殺された方は弱かったか不運なだけだった。
という感覚がルルーシュの中にはしみついてしまっていたんじゃないかと。
母親を殺されたことに怒り続けているくせに、目的を遂げるための殺人を是とする。
その矛盾に自覚がなかったのか目をつぶっていたのか、つっぱしり続けるルルーシュ。
そんなルルーシュにブレーキをかけたのはシャーリーだった。
黒の騎士団に父親を殺されて途方にくれ、自分にすがりついてくるシャーリー。その黒の騎士団を率いている「ゼロ」は自分なのに。
この時点でようやくルルーシュは、自分が殺した人々の背後には幼い頃の自分のように泣き惑う人々がいる、と実感した。
しかし、それがわかってもルルーシュは「ゼロ」であることをやめなかった。
シャーリーの涙も、ようやく手に入れたものを手離すほどのインパクトをルルーシュに与えなかったってことなんだと思う。
「ゼロ」を捨て元の世界に戻ってひきこもる、なんて選択肢はルルーシュにはなかった。
この頃のルルーシュは、「ゼロ」であることに快感をおぼえていたんだと思う。
自分の力が認められる快感、自分のヴィジョンが次々とリアルになっていく快感。
いわゆる「自己実現」の快感がルルーシュを支配していたんじゃないかと。
それまで、自己を押し殺すことを強いられてきたルルーシュにとって、それは絶ち難い誘惑だったんじゃないかな。

そんなルルーシュの前に現れたユーフェミア。
子供の頃に別れたっきりにもかかわらず、素顔を見ていないにもかかわらず、「ゼロ」がルルーシュであることを看破したユーフェミアは、相当、ルルーシュが好きだったんだろうと思う。
ナナリー以外の親族は全て敵のはずだったルルーシュも、「ゼロ」としての自分を知っているにもかかわらず、くったくなく近づいてくるユーフェミアには甘かった。
けれど、ギアスの暴走という予想外の出来事により、「虐殺皇女」の汚名を背負って、ユーフェミアは死んだ。
その死を無駄にしないために、ルルーシュは「ゼロ」としてそれを利用した。
ギアスがひっこまない瞳を涙で濡らしながら。

初恋の人を失ったルルーシュ。それは、唯一の親友を失うことにもつながった。
さらにルルーシュの困難は続き、ナナリーがV.V.によって誘拐される。
ナナリーのことになると冷静さを失うルルーシュは、「ゼロ」としての立場をあやうくする言動をさらしてしまった。
そして、ルルーシュは敗北し、ナナリーから引き離され、記憶を奪われ、「ブリタニアの皇子」と「ゼロ」としての顔を失う。
ルルーシュに残されたものは「ブリタニア人の学生」という顔だけだった。

二期は「ブリタニア人の学生」であるルルーシュが賭けチェスに向かうところから始まる。
この時点でルルーシュは「ブリタニアの皇子」としての記憶を持たず、暗殺に脅えることもなく、守らなければいけない妹もいないんだが、精神状態の不安定さは一期と同じだった。
これは、ルルーシュが「ゼロ」になった理由はナナリーだけじゃない、ということを実感させた。
多分、ナナリーがいなくても、ルルーシュは自分だけのために「ゼロ」になった。
あれほどせっぱつまった感じではなく、もっと余裕をもった「ゼロ」になっていた可能性はあるけど。

記憶を取り戻し、「ブリタニアの皇子」と「ゼロ」としての顔を取り戻し、父への憎しみをさらにふくらませたルルーシュ。
そして、ナナリーと離れ離れにされた怒りの矛先は、偽の弟・ロロに向けられる。
ルルーシュは報復として、「兄」の顔をロロの前で維持し続けた。
ロロを最も効果的に利用し、最も効果的に裏切るために。

「ゼロ」として中華連邦を味方につけたルルーシュ。彼の野望はチェックメイト寸前。
その裏で、ルルーシュはシャーリーを失い、それ以降、「ブリタニア人の学生」としての顔を見せなくなってしまった。
シャーリーは普通の少年であるルルーシュを支えてくれた人だったから、それを失ってしまった時点でルルーシュは「ブリタニア人の学生」の顔を保持する意欲を失ってしまったんだろう。
ユーフェミアとシャーリー。大事な女性は両方ともルルーシュのために死んでしまった。
その深い傷を埋め合わせるかのように、ルルーシュはギアス饗団の殲滅にはしり、その最中、思いもかけない状況で父と再会した。
自分が記憶を取り戻したことを父に知られたルルーシュはあせり、ナナリーの一刻もはやい奪還へと動き出したが、その過程でナナリーは死んでしまった。
命懸けで守ろうとした、たったひとつの存在・ナナリーを失ったルルーシュ。
その絶望に追い討ちをかけるように、「ゼロ」は黒の騎士団から追い出されてしまう。
ナナリーと「ゼロ」の顔を失い、生きる気力をも失ったルルーシュを救ったのは偽りの弟・ロロ。
ルルーシュに「兄」としての顔を求めたロロは、ある意味、特異な存在だった。
「ゼロ」に身代わりは立てられる、「ブリタニアの皇子」はたくさんいる、「ブリタニア人の学生」なんて何十万人といるだろう。
だけど、ロロがルルーシュに求めたのは、ルルーシュにしかできない「兄」という役だった。
すべての立場を失い、守るべきものを失い、からっぽになってしまったルルーシュを、世界を敵にまわしてでも守ろうとしたロロ。
そのひたむきさはルルーシュの命を救っただけではなく、その精神を崩壊の淵から浮かび上がらせた。

ユーフェミア、シャーリー、ロロ。いくつもの顔を持つルルーシュをまるごと受け入れたうえで、ひたむきな愛情を示してくれた人々はすべて、ルルーシュのために命を落とした。
「愛してる」という言葉を捧げ続けたナナリーも失われた。
その時に、ルルーシュのアイデンティティの再構築は完成されたように思う。
本当の意味で孤独になり、絶望の淵に立った時、ルルーシュはようやく「ルルーシュ」として自立したんじゃないかと。

結果として「ブリタニアの皇子」の顔だけが残っていたルルーシュは、父と母を自分の手で抹消することで、その顔をも消し去った。
ただのルルーシュになった彼は、「ブリタニア皇帝」の顔で世界の前に姿を現す。
自分がシナリオを書いた茶番劇の「虐殺皇帝」という役を演じるために。

ルルーシュは自分が担った役を見事に演じきってみせた。
ナナリーでさえ、それがルルーシュの真の顔であると思い込むほど。
そして、ルルーシュは「ブリタニア皇帝」の顔のままで死んだ。
「ゼロ」の顔をスザクに託して。

生まれた時に与えられた「ブリタニアの皇子」の顔。
ナナリーと自分の身を守るためにアッシュフォード家につくってもらった「ブリタニア人の学生」の顔。
そして、望みを叶えるために自分でつくった「ゼロ」の顔。
様々な「顔」を手に入れては失ったルルーシュが最後に選んだ「顔」が、彼が人生の中でもっとも憎んだ存在「ブリタニア皇帝」だったってのは皮肉としかいいようがない。
でも、ルルーシュは安らかな表情で死んでいった。
誰かに押し付けられたものではなく、自分が選んだ顔で死んでいくことに、ルルーシュは満足していたんだろう。



なんかスザルル(爆)の話を書きたいと思って書き出したような気がするんだけど、全然、スザクにふれてない……。
それなのにこんな長さになってる。おまけにちっともまとまってないっ。ああっ、なんてことっ。
すみません。時間があったら出直しますけど、多分このまま逃げます。
ここまで読んでくださった方がいらっしゃいましたら、ありがとうございました。お疲れ様でした(苦笑)。
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カレンダ
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Author:ひでみ


職業はプログラマ。
主食はマンガとアニメ。


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